凍結防止剤の使い過ぎは環境に良くない!

凍結防止剤の使い過ぎは環境に良くない!

アメリカの寒い地域では冬季になるとものすごい量の塩を凍結防止剤として道路にまきます。

学内の歩道にもこんな感じでバラバラと。雪が降ったあとには除雪車が雪を除雪しつつ塩をまいていきます。高速道路や幹線道路は特に入念に。もちろん冬季の交通を安全にするために必要ではあるし、大学内でも冬には「すってんころりん」ということが珍しくないので(この辺りは-20度になることもある)、凍結防止剤に助けられています。

けれども、溶けた凍結防止剤(塩)がどうなるのか、使う方も恩恵を受ける私たちも、あまり真剣に考えていないようです。溶けた塩の一部は近くの小川や湿地に流れこみます。すると、水生生態系はどんな影響を受けるでしょう。カエルやサンショウウオの子供たちは大丈夫なのでしょうか?

そんな疑問で始めた研究が最近ようやくEnvironmental Pollutionという学術雑誌に掲載されました。

2人の学部生とこの実験をおこなったのはもう5年も前のことです。今では2人とも卒業して、ケイトはワシントンDCで会社勤め、メリッサは大学院生として今でも両生類の研究を続けています。

実験ではキボシサンショウウオの幼生とアメリカアカガエルのオタマジャクシ、そしてトンボの幼虫ヤゴを実験では使いました。直径2メートルほどのプラスチック製の池をたくさん使い、それぞれの池で条件を変えての大掛かりな実験です。

アメリカアカガエル

アメリカアカガエルとキボシサンショウウオ…あまり良い写真ではないですが、探すのが面倒なので(苦笑)

この研究で明らかになった主なことをまとめると、

1. 凍結防止剤はサンショウウオの幼生の生存率を62%、カエルのオタマジャクシの生存率を30%も減少させた。

2. 凍結防止剤とカエルのオタマジャクシの両方が与えられた実験池では、サンショウウオの幼生の生存率は80%も減少した。これはオタマジャクシとサンショウウオの幼生が競合関係にあり、オタマジャクシの方が競争に強いために起こった結果です。

3. 凍結防止剤を加えるとサンショウウオの幼生の奇形が50倍ほど増えた。

4. ヤゴがいるとサンショウウオの生存率は3割ほど減少したが、オタマは影響を受けなかった。

他にも興味深い発見がいろいろありましたが、キボシサンショウウオの幼生たちは凍結防止剤のため、だいぶ苦境にたたされているだろう、ということが分かりました。

だからといってすぐに凍結防止剤の使用停止ということにはならないのは当然です。使用場所を限定するとか、量を減らす。もしくは溶けた凍結防止剤が近隣の湿地に流れ込まないようにするなど、対処を考えてくれれば良いのですが…こんなところにも人間と動物の共存の課題があるんです。

One thought on “凍結防止剤の使い過ぎは環境に良くない!

  1. なるほど。凍結防止剤も良いことばかりじゃない。研究することで色々な事がわかるんだね。

    何もかも人間様のご都合…で、なんだか悲しくなるなぁ😣

    ポチ

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