マインドフルネスと環境教育

マインドフルネスと環境教育

マインドフルネス(mindfulness)という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

もともとパーリ語のsatiに由来する言葉で、上座部仏教(小乗仏教)において涅槃に至るまでの8つの正しい行い(八正道)の中の一つです。マインド(心)をフルにする(満たす)という意味にとれますが、心がその瞬間瞬間に注意を払っている状態を示します。

「心コロコロ」とお坊さんがおっしゃってるのを聞いたことがありますが、私たちの心、そして思考とは当てにならないもので、次から次へと移ろいます。そんな心を「今ここ」に連れ戻す練習が、坐禅(メディテーション)であり、その基本姿勢がマインドフルネス(sati)です。

坐禅を始めて4年半になりますが、週に4から5回、朝30分の坐禅を続けてきました。もともと仏教にも坐禅にも興味もなく、どちらかというと宗教は胡散臭いなと思っていたのですが、偶然にもペンシルバニア州のこの田舎町で曹洞宗の尼さんと知り合いになり、彼女の指導のもと坐禅をするようになりました。

御年83歳のアメリカ人である彼女と最初に出会ったのは10年以上前でしたが、お坊さんと会って「この人は只者ではないな」と思ったのは彼女が初めてでした。

彼女のおかげで坐禅を始めて本当に良かったと思います。心が落ち着いたのはもちろん、物事に対する集中力もあがりました。時には苦痛だった人との会話も楽しくなりました。

メディテーション(瞑想・坐禅)については心理学の分野でも近年研究が進み、僕が経験したような効果が一般的に得られることが分かってきています。アメリカではメディテーションをカウンセリングに取り入れ、心配性やうつ病の患者さんの治療に効果をあげています。

アメリカの大学生もストレスを抱えている子が多く、そんな学生たちを対象にメディテーションの授業をやろうと、友人の仏教学者と話し始めたのが3年ほど前。今年それがやっと実現しました。授業のタイトルは「Meditation: Religion & Science」。予想以上の反響で、レジストレーションが始まり1時間もしないうちに32人の定員に達し、もれてしまった多くの学生からも連絡がありました。興味のあるかたは、下ののシラバスをのぞいてみてください。

その授業も先週終わりましたが、学期末の学生のグループプロジェクトで、メディテーションやマインドフルネスと環境教育について調べた学生たちがいました。要約すると、メディテーションやマインドフルネスのトレーニングを続けると、環境との繋がりをより意識するようになり、環境に優しい行動を心がけるようになる、というのです。ただし、この分野の研究は始まったばかりで、結論をだすにはまだまだデータ不足です。

仏教では慈悲をときます。禅仏教では無をときます。無とは同時に繋がりそして変化を意味します。人間と自然とは繋がっていて常に変化しています。となると、人間だけでなく自然に対しても慈悲心をもって接するべきです。

仏教から抽出され、アメリカでアメリカ人の顔をして一人歩きしているメディテーションやマインドフルネスですが、そのトレーニングを続けることで慈悲の心が育つという研究結果もあります。

そうであれば、マインドフルに瞑想・坐禅することが環境に配慮した行動につながるのは必然だなと思います。忙しく誘惑の多い日常の中で、静かに心を落ち着ける時間を持つことは、心にとっても環境にとっても良いことではないでしょうか。

興味のある方は坐禅に関する書籍もたくさんでていますし、この曹洞宗のサイトで検索すると坐禅会を催しているお寺の検索ができます。

瑞樹

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